CDP-701ES延命計画 12024年01月21日

CDP-701ESの延命処置として、DAC化改造を推してきた高速化事業部ですが、DAC化だけでは解決できない新たな?問題が浮上してきました。

前回仕上げた依頼品のCDP-701ESが、右chからノイズが出たり音が途切れるようになったと連絡がありました。
全体的に再ハンダして、十分すぎるほどエージングして楽しんでから発送したんですけどね。
まぁね、もう40年選手ですから、いつ壊れても不思議ではないという事ですかね。





ノイズの原因は色々ありますが、 「音が割れたり途切れたり」、「片chだけの症状」、「ヘッドホンもラインアウトも同じ症状」 は過去の経験からLPFモジュール不良の可能性が非常に高いです。
CDP-701ESに限らず、この頃のCDプレーヤーには多いトラブルですね。

私のCDP-701ESも時々ノイズが出るようになったので、いずれはなんとかしなくちゃとは思っていましたが、良い機会ですのでLPFモジュールを製作して延命化する事にしました。












私が知る限りではCDP-701ESにしか搭載されていないスペシャルなLPFモジュールです。
この頃の製品って、中身を樹脂で固めてある物が多いんですよね。
ソニーはだいたい村田製を、パイオニアはTDK製を多く採用していたようですが、どちらもよく故障していますので樹脂封入は長期的に見ると良くない方法といえるでしょう。

この手の物は無理に分解すると中身は普通に破損してしまいますので、音質云々よりも複製防止策だったのかもしれません。

今回は、コイツの分解からスタートです。
いくら故障品とはいえ、今となっては貴重な部品ですので入念に作戦を練ってから丁寧に分解します。












ケースに入ったまま無理に引き出すと破損するリスクが高くなるので、ケース側から広げて剥がしました。
うん、ここまでは順調。
問題はこの黒い樹脂をどう剥がすか・・・











溶剤を使う前にヒートガンで加熱してみました。
基板のリワーク用を使用して温度を180℃くらいにセット。
これなら焦がしたり燃やしてしまうリスクを下げる事が出来ます。











なんとかここまで、このあとは溶剤でキレイにしていきます。
これなら修理できそうですが、次もうまくバラせるかといえば無理かもしれないので、やっぱり作ってサクっと交換が正解でしょう。

しかしまぁ、DIPオペアンプで組まれていたとは・・・!
なかなかの力業ですね。












ヨシ!
それではいよいよ楽しい楽しいリバースエンジニアリングの時間です!
横文字で言うとなんだかカッコイイですが、まぁ普通に丸パクリです。












中身は教科書通りのよく見る11次GICフィルタでした。
出力バッファは付いていません。
コンデンサは規格品ですが、抵抗はトリミングされた専用品で組まれています。
まぁ、そうですよねぇ。












回路と定数が決まったので基板設計です。
オリジナルと完全互換とするため、同サイズの基板にリード線部品を押し込みます。
え?面実装ですか?
もう老眼なのであんな米粒みたいな部品は全然無理なんですよ。
オリジナルもDIPだったので問題ないでしょ!?












ポチっと発注してから6日ほどで大陸から基板が届きました。
DIPではなくSIPオペアンプを使い、コンデンサや抵抗は全てリード線タイプです。

ぎゅうぎゅうに押し込んだらけっこう余裕が出来たので、空いたスペースにパスコンを4個付けるようにしました。
ちなみにオリジナルにパスコンは付いていませんでしたよ。












まずは1個だけ試作。
フィルムコンデンサは規格品で、抵抗は何処でも手に入るE12系列で近いものからチョイスして組んでみました。
ここから、オリジナルの特性に近づけるように試行錯誤する作戦です。
なんせ多段フィルタですからね。簡単に行かない事は覚悟の上です。












まずは動作確認。
LPFとしては正常に動作していますが、特性はまぁ・・・思った以上にダメですねぇ(^^;
17kHzあたりからダレ始めて20kHz付近ではだいぶ落ち込みます。

ちなみにオリジナルは20.5kHz付近までフラット!
そこから一気に断崖絶壁の如く急降下していきます。
いやぁ、やっぱりメーカーは凄いです。
これを作り上げるまで、一体どんな日々だったんだろうと、考えるだけで胃が痛くなります。













それから暫くは変えては測っての繰り返しで、キレイに作った基板はグチャグチャになりました。
やっぱり多段フィルタは難しいです。
ピークを出して打ち消して・・・そりゃデジタルフィルタのがラクですよね。












試行錯誤して 「もう、市販部品で作るならこれでいいだろ」って感じで仕上がったのがコチラ。
本当はネットワークアナライザでの測定が正解なのですが・・・・・お手頃価格で良いのがあったら教えてくださいまし。

黄色が今回作ったほうで、青色がオリジナル。
20kHzの波形です。
ここまでは両者ともフラットで来ています。

20kHzを少し超えたあたりからが勝負。今回作ったほうは下がりはじめるのですが、オリジナルはフラットを維持しています。










21kHzになるとオリジナルのほうが減衰量が多めです。
一気に急降下。格の違いを見せつけられますね。










22kHzになると両者ともほぼ消えますね。
中卒が市販の部品で組んだ多段フィルタなら、こんなもんでしょうという事で。




今回はここまで。
次回は1セット製作して実機にセットして試聴してみたいと思います。



CDP-553ESDのDAC化遊び2023年12月10日


CDP-552ESDに続いて、CDP-553ESDのDAC化です。
これもDAC基板しか無いので、前回同様に電源部とデジタルフィルターと素敵なDAI基板を用意して動作確認です。




まな板上で火入れ。
動作OK!

それでは箱に入れましょう。










何かイイ箱ないかなーってなんとなくドフに行ったら、前回使った物と同じミニコンポのチューナーが1100円でありました!
ものすごいタイミング!
これだからドフ巡りはやめられないですね!

レジで 「受信未確認になりますが・・・」 って言われましたが全然問題ありません。中身は速攻でポイしますから。










早速持ち帰って、中身を取り出して実装です。
まだ完成前ですが、我慢できずこの状態で試聴です!

・・・ハムが乗るぞ?
どこから飛び込んでるのかな?って、配線や部品を指先で触りながら原因を特定していると・・・なんか妙に熱い・・・!!
電源のヒートシンクや平滑コンデンサが触れないくらいの温度に!!
慌ててコンセント引っこ抜きました。










原因は電源トランスからDAC基板への単純な配線ミスでした。
定格の2倍くらいの電圧が片方のコンデンサに印加されてしまい、ご覧の通りパンパンに膨れてしまいました。
コンデンサが触っていられないほど熱くなるなんて・・・初めての体験です。











アタマもギリギリ・・・!
いやぁ・・・恐ろしい。気付くのが遅れていたら、防爆弁が開いて顔面直撃でした。
後からじわじわ怖くなるやつです。

幸い、トランジスタさんが頑張ってくれたおかげで、貴重なKランクのPCM53JP/Vは無事でした。
いやぁ・・・良い経験となりましたよ。










落ち着いて作業を進めます。
選局ボタンで入力切替ができるようにRS-FF回路を組みました。
このあたりは前回やったCDP-552ESDと同じです。












セレクターの回路はこんな感じ。
このくらいなら、マイコン使うよりも手間かからず安価に済ませる事が出来る・・・かなぁ?











電源スイッチはマイコン制御のタクトスイッチでしたのでロッドを介してメカニカル式に変更です。
ストロークは短めが無難かな。











完成です!
電源トランスはソニーのアナログBSチューナーに付いていた物を使いました。
単体DACには十分すぎる容量ですね。
妊娠させてしまった電解コンデンサは6800uFに交換。
オリジナル以上の強力電源になりました。










わくわくの試聴タイム。
第一印象は、重心の低いドッシリとした図太い音ですね。
太いんだけど・・・なんだろう・・・?

そう、DAS-703ESを愛用していた時に薄々感じていた、ほんのちょっと重いというか、どこかちょっと暗い感じに鳴るあの感じ・・・
些細な事かもしれませんが、それがずっと気になって出番が減って、結局金欠もあって手放してしまったんですよね。

確認のため、前回仕上げた552ESDを用意しました。
やはり552のほうがポンポン弾むように気持ち良く奏でます。

553はドーンと落ち着いて構えた、ちょっと大人しい雰囲気かな。
ものすごーく悪く言ってしまうと、重くて弾みきれていない印象。

回路的に見ても552と553の違いはDACチップのみと言って良い内容です。
デジタルフィルターはもちろん、DAC以降のアナログ回路も定数も素子もほぼ同じなので、この音の違いはDACの違いに依るものと判断して良いと思います。

今まで私はDACの音質差はそれほど大きくないという認識でしたが、これは間違いだったようです。
キャラクター的なものはDACよりもデジタルフィルターのほうが支配的になりますが、DACの影響も無視できないレベルであることを確認する事ができました。
いやぁ・・・こんなにも違うとはね・・・。

どっちが良いかは好みの問題ですが、私は552のほうが好みですね。
しばらくは552と553を入れ替えながら楽しみたいと思います。