放射線量計の製作記2012年11月01日

今回は放射線量計の製作です。
残念ながら、今のこの国で危険な放射線から身を守るには1家に1個、いや一人1個必要になってしまいました。

今でこそ近所のホームセンターで5000円程度で手軽に買えるようになりましたが、事故直後は数の少なさも影響して価格高騰していました。
そんなわけで作るしかないと始めたのがきっかけです。

放射線を測定する方法はいくつかありますが、一番お手軽で昔ながらのGM管(ガイガーミュラー管)で作ることにしました。
GM管にも色々ありますが、感度も良く価格も手頃な旧ソ連のSBM-20やCTC-6を入手して色々遊びながら作りました。
これらのGM管は400ボルト以上の高電圧が必要になりますので、使い捨てカメラのストロボ回路をアレンジして単三電池1本を約420ボルトまで昇圧してドライブしています。



GM管で検出した放射線を数値化するのは、おなじみiphoneのアプリ「ガイガーボット」です。
変換係数も自由に設定できるのでキチンと校正することもできるスグレモノ!

この組み合わせで暫く使っていましたが、色々と問題点が出てきました。
まず、このガイガーボットがアップデートを重ねるにつれどんどん不安定になってしまい、現状では突然暴走して猛烈にカウントしてしまうようになってしまいました。
これでは測定などできません。
また、アップルの罠とでもいいましょうか、OSのアップデートでiphone本体の動作が非常に重くなってしまい、文字入力すらできなくなってしまいました。
これらの不具合から、この組み合わせでの使用は断念し、新たな方法を検討する事にしました。



世の中、GM管の他にシンチレーター方式というのがあります。
動作原理を簡単にいうと、シンチレーターに放射線が入ると僅かに発光するので(人間には見えないらしいです)その光を何らかの方法でキャッチして信号として取り出します。
まずはとにかくやってみようという事で、1センチ角のタリウム活性化ヨウ化セシウムの単結晶シンチレーターを入手し(けっこうなお値段でした)、この手の定番フォトダイオードでもある浜松ホトニクスのS6775と組み合わせて実験してみることにしました。

S6775は逆バイアスをかけず、出力をそのままFETでバッファリングするようにしました。
2線式コンデンサマイクの中身と同じ、あの方法です。
こうすることで、単体で使う時に比べノイズにも強くS/Nにも有利でなおかつ単芯シールド線での引き回しが可能になります。
実際に機器に組み込んで使う場合は必要ない方法かもしれませんが、実験であれこれやる場合は作業性を考慮してこの方法がベストと判断しました。



光学カップリンググリス(これもまた高価です)を介して密着させて、水道用シールテープでぐるぐる巻きにして固定します。
そしたらアルミホイルでシールドして出来上がり!
あ、シンチは素手で触っちゃダメらしいのでゴム手袋で作業しました。

この状態で、実験開始。
プラグインパワーのマイクアンプに接続すると、残留ノイズの中にプチパチ音が聞こえます。
キャプテンスタッグのマントルを近づけるとえらい騒ぎです(^^;
GM管とは比較にならない検出量!軽く60CPMは出ています。
SBM-20が我が家でだいたい17CPMくらい、CTC-6が60CPMくらいですので、かなりの高感度です。

市販のシンチレーター方式の線量計(日本製のちゃんとしたやつね)は検出信号をビデオ帯域までピックアップして数百CPMという超高感度を実現させていますので、それらと比べると見劣りしてしまいますが、オーディオ帯域までしか使用していない素人の自作でこの性能なら充分でしょう。
市販の半導体フォトセンサだけの安いヤツなんかメじゃないぜ!?



実験で好結果が得られたので、次は問題の数値化です。
iphone+ガイガーボットという組み合わせはもう使いたくないので、秋月電子通商の「PINフォトダイオード使用簡易放射線モニターキット」を利用してみることにしました。

詳しい事はわからなかったのですが、変換係数の変更が出来るらしいので、まぁモノは試しということで購入。



さきほどと同じ要領で、付属のS6775とシンチを合体させます。



ぐるぐる巻き完了。
前回よりもキレイに巻けました(^^)



電源ON!
簡単なキットなので難なく起動・・・ですが、どうも動作が怪しい(^^;
思うようにカウントしてくれません。
っていうか、周りのノイズに超絶過敏感!(意味不明)
物音1つ逃さずに拾ってカウントしてくれます。
電源入れ直すと全然カウントしなくなったり・・・もう何がなんだかわけわかんない状態。

このキットについて軽くググってみると、同じような症状で悩まれている方々がヒットしました。
電源投入時にノイズと検出信号とを区別するための「しきい電圧」を自動設定してくれるようですが、どうやらこれが曲者のようです。
動作が不安定ゆえに、電源ON時に何らかの弾みでこの「しきい電圧」が高く設定されてしまい、カウントできなくなってしまうようです。
カウントできる値になったとしても、当初実現できていた「軽く60CPM」なんて全然無理。

とにもかくにも、アナログ回路に無理があるのは事実。
やはりこの増幅度でDIPパッケージのオペアンプというのは厳しいです。
シールドをしっかり行ってノイズの問題を完全にクリアできたとしても、安定した性能は全く期待できないと思われます。

よって、この秋月キット+シンチ化計画は断念する事にしました。



シンチは無理でも、GM管ならイケるんじゃないか?
お試しでやってみる事にしました。

オペアンプ周りの回路と定数を変更して、iphone用に作ったSBM-20とドッキング。
結果はバッチリ!!
シンチの時のあの不安定さは一体何だったんだというくらい安定しています。
それでも例の「しきい値」が怪しくなる事がありましたので、オペアンプ出力はコンデンサでカップリングしてDCカットし、PIC入力直前でバイアスを与えて常時0.8Vくらいになるようにしました。
これで不安定さは解消。振動にもビクともしないし、シールド無しで安定しています。
やっぱ、こうでなくっちゃね!
よし、この方向で進めましょう!



一体型にするので、電源は006Pの9V電池1個で動作するようにします。
よって、今までのストロボ改の高圧回路は使えなくなりますので、別の方法で高電圧を得なければなりません。



オクで何かのバックライトのドライブ基板が出てたのでポチってみました。
お値段は金麦ロング缶くらいだったと思います。
1N4007と高耐圧コンデンサで整流して試してみると、けっこうな高電圧。っていうか高過ぎです(^^;
このままでは使えないので、1Mオーム+コンデンサでLPFを組んで、10Mオームの負荷を与えたところ丁度良い塩梅になったのでこのまま負荷抵抗を付けたまま使う事にしました。

それにしても高インピーダンスな高電圧回路の測定って、めんどうですねぇ。
良い経験でした。



ケースはタカチのSS-160だったかな?
SBM-20が長いので、それが入るケースというと、こんなにでかくなっちゃう・・・。
もう少し小さいほうが良いのですが、まぁ素人の工作ですからこんなもんでしょう。



適当に組み込みます。
SBM-20は、β線を遮断して動作を安定させるため銅パイプに入れています。
使用しているSBM-20は専門業者さんが測定し選別したものを購入して使っています。
通常の物よりも高価ですが、動作しているだけでよくわからない物よりはずっと安心です。



完成!
操作は電源スイッチだけ。これなら誰でも使えます。
まだキチンと校正していませんが、変換係数は4~5くらいの間ですかね。
信頼できるチンチ等で校正すれば、十二分に使える線量計の完成です。

それにしてもこのキット、デフォルトでは全く使い物になりませんです。
あれこれやるのが面倒な人は、素直にエアカウンターSを買ったほうが良いですよ。


コメント

_ ふ゛り ― 2012年11月02日 11:14

毎度感服です。
ホンモノが少し分かり始めた大陸の会社に身売れば数年は超高給取りでやっていけるのでは。

_ なおすけ@CEO ― 2012年11月02日 18:49

いやいや、御師匠様、数年後に抜け殻の様になって帰国ではご家族が!?

_ りょうさん@管理人 ― 2012年11月02日 21:34

いやいや、抜け殻になって帰国で済めば・・・(^^;

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