あきゅ T-110CS2012年06月25日



アキュフェーズの最高級CS-PCMチューナーT-110CSです。

DTU-S10と同じ、放送サービス終了と共にゴミになってしまったチューナーです。
ゴミのはずなのに、オクでも高値安定を維持していて、ウチの資金力では全く太刀打ちできずどうしたものかと思っていたところ、オーディオの杜さんから提供していただきました。
ありがとう杜さん、杜さんのお父様。
大切に、慎重に、おもいっきりバラバラにさせて頂きますね!

っつー事で、いつものようにDAC化して遊びます。


MMBとかいう名称の「究極のマルチビットDAC」が搭載されているとの事。
開けてみるとDACチップが4個も付いている模様。


バーブラウンのPCM1700Uが4個でした。
ん~~
1個でステレオ(2ch)出力できる、どちらかというと高性能よりもお手軽タイプの石で、当時のミニコンポなんかによく使われていたと思います。

1個でステレオ出力の石なので、これをモノラルモードで使用しているのかな。
XLR出力が装備されているから当然、差動構成になっているんだろうな。
なんて淡い期待も空しく、ごくごくフツーにステレオモードで内部I/Vによる電圧出力。
それを単純に4個を電圧加算しただけの構成でした。
どこが「究極のマルチビット」なん??

デジタルフィルターはヤマハのYM3434。
当時、秋月で買った人も多かったのではないでしょうか。
YM3414同様、キレイだけど薄い音のする石ですね。
どれもこれも、当時としても1世代前の安価なデバイスばかりなのは何故?

うーむ、すべてにおいてDTU-S10のほうが、すんごく手間もカネかかっているぞ!


YM3434じゃ全然面白くないので、違うデジフィルを使う事にしました。
どうせなら、ディエンファシスもデジタル処理できればベスト。
ということで、18ビット出力が可能な物の中で比較的好みの音のするSM5840あたりがいいかなと。

で、ピンときたのがこの基盤。
アイワのDAC内蔵カセットデッキXK-S7000のDAC基盤。
これなら超お手軽に組み合わせ可能です。


サクっと組み合わせて動作確認。
オッケーですね。ディエンファシスもバッチリです。
F特がビシっとフラットにならないのは、このGICフィルタの特性なのかな?
それとも、ここらへんにアキュの音作りが入っているのかな?
それともただ単に電圧加算による干渉?まさかね(^^;

ちゃんとケースに組み込んだ状態での試聴ではないのでなんともですが、普通の音ですね。
電圧加算は、下手にやると音が濁ったりするもんですが、聴いた感じでは問題ないようです。
アマチュアがよくやるパラ化のような不自然な低音ドスドスもなく、アキュが電圧加算を選んだのはこういう狙いだったのかと勝手に納得してみたり。
でも、キラキラ輝く感じや抜け良く弾む感じはDTU-S10のほうが明らかに・・・。

ちゃんと仕上げたら、ホームページのほうで記事にしたいと思っています。

電流出力アンプ CDA-HF72012年05月25日



広福研究所からリリースされている電流出力型オーディオアンプ「CDA-HF7」のキットを組み立ててみましたので、今回はそのかんたんレポートです。
現在は部品が全部セットになったキットとしてリリースされていますが、私が製作した時は基板と鬼選別抵抗のセットでした。
という事でまずは部品入手。これが難しい。

抵抗のワット数やコンデンサの耐圧など・・・パーツリストには同じ容量でも耐圧がそれぞれ細かく指定されていましたが、面倒なので全部まとめて同じ耐圧で仕入れました。
これが大きな間違いで、その後の作業をより難しいものにしてしまうのでありました。


このCDA-HF7の基板はキット前提に設計されたものではないため、作り易さよりも性能優先で設計されています。
パターンの引き回しを最短にするため、極力小さな部品を用いて極限まで実装密度を上げているようです。
例えば、コンデンサの耐圧を守らないと隣の部品に干渉してしまったりと・・・素直に言う事をきかないオイラは苦労しまくりでした(^^;
抵抗は小さい1/6Wが指定されていましたが、ウチは1/4Wしか在庫していないので立てて取り付けました。
1/6Wなら、寝かせて最短で実装できるんですけどね。プチ妥協・・・。

最も苦労したのはトランジスタの入手&選別ペアリング作業。
まず、指定の2SA1869/2SC4935が入手できないので広福さんに相談したところ、入手性の良い物の中でA1359/C3422が使えると教えてくれました。
これなら秋月にもあるので八潮でガッツリ購入してきました。
しかし、なかなか良いペアが取れません。
hfeはロットごと、いや固体ごとにバラつくので、こればっかりは運の問題。
ペアリングの確率を上げるには大量購入して選別しまくるしかありません。
翌月に再度八潮へ。それでもダメ。ヤケクソで通販で購入、それでも揃わず・・・まさに散財!
結局、気持ちの良いペアは取れませんでしたが、一番近いものでヨシとしました。


違うトランジスタを使うので向きを逆に付ける必要があり、基板裏面に付ける事も考えましたが格好悪いという理由で却下。
アルミを加工して専用ベースを作りました。
これなら、この先A1869/C4935に変更する際も取り付け穴はそのまま追加工無しで変更できます。


ケースはタカチのハーフコンポサイズのHYシリーズに決定。
LXA-OT1-Rの時に使ったカッコイイ奴です。
電源は当初普通のEIコアのを1個で安く仕上げるつもりでしたが、せっかくの楽しい自作なのでオーバースペックなトロイダルコアのトランスを左右完全独立で2個、プロテクター用に1個
、合計3個ものトランスを使う事にしました。
このボリュームをハーフコンポサイズに収められるのだろうか・・・でももう買っちゃったし後戻りできないので試行錯誤しながらなんとか押し込みました。


電源スイッチをフロントパネルまで持ってくるのは面倒なので、ロッド延長という方法を試みました。
メーカー製では当たり前の方式ですね。
うーん、なかなか難しい。より面倒だったかも・・・(^^;
電源表示のLEDは直径1ミリの光ファイバーで基板からパネルまで引きました。
林檎印のPCから頂いたアイデアで、なかなかオシャレです?

トロイダルコアのトランスを2個も使うので、突入電流も無視できなくなります。
そこで、電源投入時は抵抗を介してソフトスタート、数秒後にリレー直結フル稼働するようにしました。
もちろん、スピーカーのミュート回路も付けましたよ。


ほぼ組みあがり、残るは調整です。
アイドリング電流は難なくクリア。
しかし、オフセットが難しい!
オペアンプのバラつきがそのままオフセットとして現れるため、基板上の半固定抵抗だけでは調整範囲を超えてしまいます。
半固定抵抗に対してシリーズに適当な抵抗を入れては調整といった作業を繰り返し、ようやくベストポイントが見つかり完了。
その後、長時間エージングを行い、ほんのり温まってから再度軽く調整して完成となりました。


さっそく視聴。
スピーカーは広福さんのホームページで公開されているCDA(CurrentDriveAmplifier)専用として設計されたFE83En用のバックロードホーンを製作して用意しました。

一般的なアンプはデジタルだろうがアナログだろうが全て電圧駆動アンプなのに対して、CDAは電流出力型のアンプです。
電圧駆動アンプは低インピーダンス出力の強力なパワーでスピーカーを強制的にパワーでねじ伏せるように駆動するのに対して、CDAは高インピーダンス出力でスピーカーが必要としている分だけ電流を流して駆動します。
ん~~ちょっと違うかな。でもイメージ的にはそんな感じ。

あ、そうそう、大切な事を忘れてた。
電流出力のCDAは「フルレンジスピーカー限定」です。
つまり、原則としてアンプとスピーカーユニットを1対1で使うって事です。

世のスピーカーは全て電圧駆動を前提に設計されています。もちろん今回のFE83Eもそう。
これを電流駆動すると、若干ハイ上がりになる傾向があります。
このあたりは、イコライザー等で補正すれば解決ですが、私はあえてそのまま使っています。

さて、その音ですが、すごーくキレイな・・・見通しの良い空間がフワっと浮かぶような・・・
前途の理由でハイ上がりだからそう感じるんだろうとも思いましたが、いやいやこういう音はイコライザで意図的にハイ上がりにして得られるものではないです。
これは情報量が圧倒的に多い証拠。従来の電圧駆動アンプでは得られない領域です。

SACDのハイブリッド盤で、SACDとCDを聞き比べると、SACDのほうが空間が明らかに広いでしょ?あんな感じかな。
中~高域の情報量や解像度は圧倒的で、最初はかなり戸惑うはず。
低域は、流行の「重低音」という言葉を借りを表現するならば、電圧駆動アンプのような腹に響く強烈な重低音は無理ですが、重低音の音階をも淡々と表現してくれます。
これって、けっこう凄い事だと思いますよ。

曖昧さや滲みといったものは一切なく、全体的にはクリアというかクールな印象。
ゆえに、硬質な音ともいえるかもしれません。
でも、女性ボーカルは優しくフワっと浮かんで超リアル。ゾクソクもんです。
クリア&ハイスピードだけど、ちゃんと血が通っている、そんな今までにない不思議な世界が楽しめます。

広福研究所が世に送り出したCDA-HF7、はたしてこれは究極のアンプなのか?
その答えは、ノーだと思います。
何故かというと、究極ってモノの定義が曖昧なのと、究極を狙うならそれなりの使いこなしが必要だからです。
一言で言うと、万人向けではないです。
究極の1台になるか否かは、使う人次第ですかね。

お店に並んでいる見栄えの良い高額な製品を購入して、部屋に並べるだけの一般的なオーディオマニアと呼ばれる人達には満足いく結果は得られないと思います。

「この一筋縄ではいかないCDAを使いこなして、新たな世界を楽しもう。あれこれ苦労しながら楽しもうじゃないか!」
そういう考えのチャレンジャーなら、このCDAはきっと素晴らしい世界を聴かせてくれるはずです。

残念ながら電流駆動専用に設計されたスピーカーユニットはこの世に存在すらしていません。
でも、こういった逆境があるからこそ、楽しくなるってもんです。
すべてが手探り。楽しいじゃないですか。

広福さんではバックロードホーンでの使用を推奨していますが、私にはダブルバスレフのほうがシックリ来るように感じました。
多分、ちょっとオーバーサイズなダブルバスレフで良好な結果が得られるのではと見ています。
このあたりは、広福さんのFE103Enバックロードと一緒に製作して楽しんでみたいと思っています。

広福研究所のホームページを見ると、難しい理論がわかるごく一部のエンジニア向けな内容で、一般庶民には敷居が高く感じて、すごく印象が悪いのが残念で・・・(^^;
あれ、もうちょっとなんとかならないですかね社長さん!
HPの雰囲気とは大違いで、実際はとっても面倒見の良い会社だったって事を付け加えておきます。
広福さんの丁寧なサポートがなければ、このキットを完成させる事はできませんでしたからね。

キットとしてはかなり難しい部類に入ると思いますが、トライしてみる価値は十分あると思いますよ。